青木ブログ

雪と山の仕事

今年の冬は暖かいですね。
暖冬というより、冬じゃないみたい。
林業という仕事は、外で行う仕事が多いので、自然に対して敏感になります。
暖冬の原因は、地球温暖化だとかエルニーニョとか言われますけど、そう言われても実際のところあんまり実感ないですよね。

暖かい年もあれば寒い年もある。
今年はただ暖かい。正月休みはとても過ごしやすくて幸せでした。

1月17日〜18日にかけて檜原村にも積雪がありました。
山の神の日の夜。
その日は朝から檜原村の大嶽神社で東京チェンソーズとして10回目の「山の神安全祈願祭」を行い、昼に地元の「はたのうどん」で新年会。
夕方、五日市に移動し、秋川の木材関係者の賀詞交換会に合流。先輩方に連れられカラオケ店へ移動し、深夜に帰宅。(どれだけ飲むんだ!)
その頃にはすでに雪は降り始めていました。
街灯の少ない夜の檜原街道はとても真っ暗で寒く、まさに冬の夜といった感じ。
自宅近くまで車で送ってもらい、街道から200mほど離れた少し高台の自宅までの道を、雪の降る中ふらふらと歩いていると、酔った体には顔につく雪とキリッとした空気が気持ちいいんです。

翌日の昼まで降り続いた雪は、檜原村で約20〜50cmの積雪。
檜原村は一番低い地点で標高225m、一番高い地点で1531mですから標高差が約1300mにもなります。
標高が100m高くなると、気温は0.6℃下がりますので、標高の高さで積雪量も大きく変わります。
2014年2月の大雪ほどではありませんが、檜原村としてはよく降った方です。

しかも、重い雪。
通常、重い雪は3月以降に降ることが多いのですが、今年は1月に降ってしまいました。
湿度が高かったせいかもしれません。
1月18日の夜明け前、山から木の鳴く(泣く)音が聞こえてきていました。
重い雪が木の枝に積もってしまうため、木が弓なりに曲がって折れる音です。
「パキーン」とか「バキッ」とか。
とても嫌な悲しい音。
酒に酔って寝ているので、普通なら外の音ぐらいでは目は覚めないのですが、
今年初の大雪に気持ちが高ぶっていたのか、心臓に刺さるような鋭い音が耳から離れませんでした。

東京美林倶楽部の苗木も、今は雪の中。
雪の中でお辞儀をした状態でじっとしています。

雪が溶けたら、「雪起こし」という作業をしなければなりません。
木を育てるということは、自然とどう付き合っていくかに尽きるような気がします。
もともと杉の成長には降水量が影響します。
同じ山でも、乾いた尾根筋より湿った沢沿いや中腹が良く、
南斜面より北斜面の方が素直に育ちます。
杉で有名な林業地は降水量の多い地域です。
特に冬に積雪の多い場所は、良い木が育つようです。
東京美林倶楽部の山は、北斜面の沢沿いから中腹。
直射ではなく、柔らかい光に育てられていくことになります。

大雪となった翌日の18日からは寒波のため連日寒い日が続いています。
明け方の気温が氷点下8度という日もありました。
そんな時は木に積もった雪は溶けずに、枝にたかったまま。
今日は1月28日。
日陰では10日間も木の枝に雪が積もったままです。

村では、「枝に積もった雪が溶けきらない時は、また大雪になる」と言われます。

明日から明後日にかけて、天気は下り坂。
雪になるか雨になるかで、山の状況は大違いです。

雨なら山の雪が溶けて、仕事が進むことになります。

雪ならさらに積雪が増し、またしばらく仕事ができなくなってしまいます。
標高500mを越える湯久保集落に暮らす吉田は、またしばらく麓に下りれなくなってしまうので仕事どころではありません。

降りすぎる雪は、会社の経営にも影響を与えます。仕事が進まなければ、利益も上がりません。
月給制を採用している以上、安定的な収益は必須です。
林業関係の会社では、雨の日や雪の日対策として様々な取り組みをしています。
当社でも、もちろん対策は打ってますが、それはまたの機会に。

今回の雪は、社有林の樹齢60年の木も倒してしまいました。
雪折れする木は弱い木だから間伐の手間が省けていいという人もいますが、残念ですね。
積もった雪で曲がった材は繊維が破壊されているので、使うことができません。
60年育ってきた木でもその一回の雪でダメになってしまいます。
雪に強い木を育てるためにも、しっかりと育林について学び、自然と折りあいながら、いい仕事していきたいと思います。

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